樹脂工場

プラモデルは好きですか?私はガンダム世代で流行に乗っかってわりと作っていました。バリが残らないようにニッパーでプチプチ切り取っていくのが醍醐味でした。固そうでいて、引っ張るとぐにゃりと伸びて、薄い部分は半透明で…子供ながら素材の魅力に惹かれていた気がしています。今回はそのプラスチックの色にまつわる体験談です。

なすのさん、樹脂*の調色お願いね。この塗装色に似せてきて。

*ABS樹脂をモールド成型します

ハイ、頑張ります!

対象製品は卓上サイズの情報機器です。OA機器とも称される明るいベージュ系統の色合いです。液晶画面周りにはモールド成型された樹脂にメタリックの塗装が施され、あまり目につかない背面はシボ加工された樹脂が使われ施ます。例えると、重箱のフタ(液晶面)には手間ひまをかけて華やかな装飾をし、中身を入れるハコ側は必要最低限の装飾で控えめに表現する、といったところでしょうか。とはいえ、フタ(塗装)とハコ(樹脂)の色が違い過ぎると商品としての魅力が上がりません。この調整をするのが「調色立ち合い」というイベントで、その落としどころはデザイナーの腕の見せ所です!

北関東にあるその工場はとっても広く、私が知っている樹脂工場の中では最も広大。立ち合いの合間に工場見学もさせてもらいました。さて、敷地内にはテスト用に少量の調色を行うラボがあり、私は北窓のある小部屋で待つことになりました。部屋の中にはD65光源再現用のライトボックスや色差計が設置されています。私の手持ちサンプルは3種類、メタリックの塗装見本とモールドを想定した塗装見本、それと事前に調色してもらっていた樹脂のトライ品。

担当の調色マンに微妙なニュアンスや再現したい方向性などを伝え、明度・彩度・色相を少しずつ動かして理想に近づけます。トライの樹脂は5×10センチ・2ミリ厚、鏡面とシボ面などがついたテストピースに成型されます。打合せ→サンプル確認に1~2時間毎の時間が必要です。今回は3回目のトライでメタリック塗装と樹脂見本との差が少なくなり承認となりました。

今回のポイント

メタリック塗装部品と樹脂部品の合わせが発生する場合は、樹脂側を暗めに設定することで完成度が高まる。

メタリック塗装見本:

反射によるフリップフロップが発生し、見る角度によって色相差が発生する。メタリックの輝度により明度差が発生する。

樹脂見本:

シボの光沢具合や凹凸具合によって表面が白っぽくなる。よって、本番では多少明度が上がることを想定して調色する必要がある。トライ樹脂のシボは本番のシボと異なるため、経験上の知識と現状とで脳内変換を行う…。

この「調色立ち合い」て決めた色が、量産用樹脂として大量に生産されるため責任重大です。製品数にすれば何万台分にも当たります。現場の経験値がものをいう業務イベントでした!